坊守が教える法要(法事)に招かれたときのマナーや喪中の方への心遣い
故人の供養をする区切りの法要ですが、その場に招かれるということはお付合いの中にご自身が加わっているということの証です。
法要にふさわしい振る舞いができるように礼儀と作法の心得を事前に知っておきましょう。
ちょっとした心遣いで偲び思う気持ちが伝わります。
法要について
法要とはお葬式や通夜とは違い、招待をうけてから参列をします。
招かれると分かっている場合、予定があるからといって先回りして法要の日程を施主に聞いてしまうのは大変失礼です。
だいたい法要が行われそうな時期は移動可能な予定でいましょう。
相手のからの案内がきたらご自身のスケジュール調整をしてどうしても都合がつかない場合はお詫びをいれます。
案内状が届いたら
法要の案内状が届いたら、なるべく早く出欠席の返事をしましょう。
四十九日や一周忌といった大切な法要に招かれたときは、病気などのやむを得ない理由がないかぎり予定を調整して出席するのがマナーです。
施主が法要へ招待するということは、是非その場に来ていただきたいと思う人への案内ですから受け取った側は誠意を示しましょう。
出欠席の連絡
出席をする場合
返信用はがきの場合は、ひと言添えると丁寧な印象を与えます。
例)
- お招き頂き、恐れ入ります。ぜひお伺いさせていただきます。
- ご丁寧なご案内をいただきお礼申し上げます。必ず出席させていただきます。
など。
電話での返事は出席の意思を伝えたあとに、施主を気遣う言葉がけをされると相手も緊張がほぐれることでしょう。
その時の声のトーンや話し方をきいて、ご自身の気持ちを素直に伝えると真心がつたわると思います。
例)
- みなさんお変わりなくお過ごしでいらっしゃいますか?
- 何かお手伝いすることがあれば、いつでもおっしゃってくださいね。
欠席をする場合
どうしても欠席しなくてはいけない場合でも返事をすぐに出すことが礼儀です。
返信はがきであれば、その際にお詫びの言葉を書き添えておきましょう。
例)・誠に残念ですが、○○により欠席させていただきます。
法要を行う日までに御供えの品を送り、手紙かお電話にて欠席しなくてはいけなかったご自身の近況を少し伝えておくと丁寧ですね。
施主側も次回の法要の連絡をするときに考慮してくださるでしょう。
服装について
一般的に親族以外の参列者は略式礼服を着用します。
招く側は三回忌までは喪服を着用されると思いますが、お葬式の形式がすこし略式だった場合、法要の形も平服の地味なものでいい場合があります。
招く側の遺族が平服に近いのに招かれた方が略式礼服ではお互いに気まずいですよね。
女性の場合は難しいところもありますから、相手の雰囲気を察しながら略式な黒のワンピースやブラックスーツに小物やアクセサリーを足したり引いたりしながら装いの重さ軽さを決めましょう。
七回忌くらいになると家族だけの法要になることも多いので、御供えを届けてお参りをさせてもらう時は平服で落ち着いたグレーや紺といった服装でも良いでしょう。
法要の流れ
法要は自宅または斎場や寺院で執り行います。
会食することまでを含めて法事ともいい、出席者の事も考えて命日に近い土曜・日曜・祝日に行う場合が多くなってきました。
出席する側は、法要が始まる20分くらい前には到着するように心がけましょう。
到着したら施主に挨拶をし、御仏前を直接渡します。
僧侶を招き読経・焼香で供養したあと、お斎(おとき)会食をしながら故人を偲びます。
御仏前と御供物料
法要の時に持参する不祝儀の表書きに戸惑うことがあります。
御仏前と御供物料どちらも使われますが意味を知りながら、上手に使い分けてみましょう。
御供物料
お供えをする代わりにお金を包んでお渡しするという意味です。
つまり、不祝儀袋のみをもって法事に参加される場合は「御供物料」でいいのです。
これは宗派を考えずに使えますからとても便利ですし、最近では御供物料のみの持参が多いような気がします。
御供物料の目安としては、法要のみなら5000円~1万 法事であるなら1万~2万という所でしょうか。
夫婦で出席したり、家族で招かれたりした場合は人数に見合った額を包むことがマナーです。
引き物とお食事の相場を考えながら、親戚内で相談をしてみましょう。
もちろん法要の規模や地域性にもよって変わってきますのでこちらも考慮すべき点です。
御仏前
法事ですから「香典」ではなく「御仏前」になります。
お供えなど一緒に持参する場合むしろこちらを表書きに書きます。
「御仏前」+御供(菓子や線香など)
※ただ、明らかに浄土真宗の法事であると分かっている場合、表書きはすべて「御仏前」と書きます。
絶対に間違えてはいけない常識
招かれるものが絶対に間違えてはいけないのが掛け紙に書く表書きです。
「志」「寸志」「粗品」を理解していないと間違えてしまう方もいるのです。
御供えを持って行くのですから「御供」でいいのです。
相手に失礼のないように少し「志」「寸志」「粗品」意味を覚えておきましょう。
「志」こころざし
「志」とは弔辞に使われる一般的な表書きです。
ただし、これは施主から参加してくださった方への掛け紙の表書きとして使います。
招かれるものが施主へ渡す御供え物に書くのはNGです。
「寸志」すんし
そもそも寸志とは目上の人から目下の人への心遣い程度のお礼に使われるものです。
一文字間違えるだけで意味も立場もガラッと変わってしまうので気を付けましょう。
特に招かれている立場でありながら「寸志」と書いてしまうのは大変失礼です。
「粗品」そしな
粗品というと、すこしへりくだった表現になりますが意味はやはり法要の席に持って上がる品に「粗品」と書くべきではないでしょう。
施主に持って行くには不向きです。
謙遜を表すのなら、口頭で相手に伝えましょう。
「心ばかりのものですけど、納めてください」
「ほんのお口汚しですが、お気に召しますかどうか・・・」など。
忌中・喪中につて
大切な家族を亡くした時は、一定の期間身を慎んで過ごすこととされています。
その期間中に注意したいこと決まり事について気になることを紹介します。
喪に服す期間
昔の法律(服忌令:ぶっきりょう)で近親者が亡くなった場合忌は50日、服は13か月とされていてこれが目安になっていますね。
父母 | 忌 | 50日 | 服 | 13ヶ月 |
夫 | 忌 | 50日 | 服 | 13ヶ月 |
妻 | 忌 | 20日 | 服 | 90日 |
嫡子 | 忌 | 20日 | 服 | 90日 |
子供 | 忌 | 10日 | 服 | 90日 |
しかし今日では同じ家に住む家族は忌明けも喪中もみんな同じように対応します。
喪中はがきを受けとったら
最近はやはりひっそりと葬儀を済ませる家族が増えてきたため、喪中はがきで訃報を知ることが多くなりました。
寒中見舞いとしてお正月明けに送るのが通常のマナーです。
例)
寒中お見舞い申し上げます
服喪中のことと存じ新年の挨拶は御遠慮させて頂きました。
など
以下は文例集などを参考になさるとよいでしょう。
最近では心遣いとしての側面から「喪中見舞い」としてすぐにお悔やみを伝えられる方もいます。
例)
貴家様から喪中のお知らせをいただき大変驚いております。
など
以下は文例集などを参考になさるとよいでしょう。
私見にはなりますが、「喪中見舞い」は過去の親友や昔の同僚など一時でも密に付き合っていた相手に送るのに適していると思います。
ただ、知ったからといっていきなり御供養料や御線香などの品を送ることはしないほうがいいでしょう。
そのつもりで喪中はがきを送ってきたわけではないので、ひっそりとお葬式をあげた理由を察し、過剰な返信にならないよう気をつけましょう。
お歳暮・お中元
相手が喪中期間であってもお歳暮・お中元を贈ることはできます。
ただ、タイミングに注意を払はなくてはいけません。
まず四十九日が済むまでは送ることはしません。
先方は色々と対応しなくてはいけないことが多く、気持ちも落ち着いていないはず。どうかすると香典の意味合いが強く感じられてしまうからです。
せっかくの気持ちを台無しにしないように気を付けて贈りましょう。
宛先の確認をわすれずに
例えば亡くなられた個人宛に毎年贈っていたとしましょう。
その方が亡くなられたということは、それ以上のお付合いはしなくても良いのです。
ただし、家族ぐるみでお世話になっていたりした場合は宛先の名前を新しい施主様に変えておくのがマナーです。
新年の挨拶
例えば、ご近所だったり会社関係の方にお正月の間に訪問したり、出会うこともありますね。
相手先が喪中であるとき、新年を祝う言葉は使わないようにします。
例)
ご近所の方や、会社の上司の場合
「おはようございます。昨年は大変お世話になりました。今年もどうぞよろしくお願いします。
去年お世話になったということをメインにつたえましょう。
友人・同僚の場合
「おはよう。今年もよろしく」
とサラッとあいさつを交わしましょう。
相手が「あけまして~」と言ってきた場合はこちらからもお返ししてよいでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
なかなか奥が深いのが仏教の儀式ですが、最近は非日常なものへなりつつあります。
意味が分からないままなんとなくその場を過ごしがちなのは、あなただけでなく多数のかたが直面してから慌てて調べて頭に叩き込むという作業をしていると思います。
しかし、奥深さのある儀式だからこそ成り立ちや意味・つながりをしっておかないと必要なこととが不必要に思われてどんどん消えていってしまいます。
今でも、簡略した形ときちんと行う形の二極化がみられます。
どちらに参加しても、大人として対応できるように場を経験した時にしっかり身に着けていきましょう。
また、このような学びをきっかけにして、ご自身のご先祖のことや儀式を行う地域の性質などについても知っておくことが良いですね。
きっとご自身が法要を取り仕切る立場になられたときに役にたつことは間違いないと思います。