坊守が教えるお葬式のこと

住職の妻である坊守がお葬式の知っておきたいことを紹介するブログです。

坊守が教えるお葬式の挨拶のマナーと例文

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喪主の立場になりますと一連のお葬式の中で何度もあいさつをする機会があります。
深い悲しみにありながら、お礼を伝える喪主の姿や言葉はどの場面においても参列者の胸をうつものです。
定型文の中には素晴らしい言い回しもたくさんありますが、そのまま暗記されるのではなく参考程度に言葉を選んではどうでしょう。
あとはあまり深く考えずにご自身の言葉で、感謝の気持ちを述べることが皆さんに一番伝わると思います。

お葬式の挨拶のタイミング

お葬式の一連の流れの中で喪主があいさつをするタイミングは3~4回あります。
① 通夜の終了時 ・・・・参列していただいた方へ
② 通夜振る舞いのお食事が始まる前※ ・・・・家族・親族・友人などへ
③ 告別式の終了後 ・・・・会葬してくださった方へ
④ 精進落としの後 ・・・・お葬式を手伝ってくれた方・僧侶・親族・友人などへ
型にはまった言葉を繰り返すのではなく、どんな方達へどんな形で気持ちを伝えるのか?という事を理解しておくと、その場面にあった言葉を選ぶことができます。
※通夜振る舞いのお食事は省略し、お茶程度を飲んでいただくような場合もあります。

あいさつに含める内容

まず、通夜・告別式でのあいさつの内容は下記にあげた点を含めて考えてみましょう。

  • 故人との関係 
  • 弔問・会葬のお礼
  •  死去の報告 
  • 生前のご厚誼へのお礼
  • 故人にまつわること
  • 遺族への支援のお願い

伝える内容を決める

通夜と告別式それぞれどんな方々が参列してくださるのでしょう。
昨今のお葬式は通夜のほうが参列しやすいこともあって、仕事関係や親しい友人・活動をともにする仲間・故人の家族の知人・ご近所など故人に縁のある関係の方がたくさん弔問に来ます。
そういった方々には死去の報告とともに生前の故人の様子、皆様から頂いたご厚誼へのお礼をつたえましょう。
告別式では日頃からお世話になっているご近所の方や故人と深い繋がりをもっていた方が参列をしますので、生前から親しくしてくださっていたことへの感謝の意とこれからの遺族への支援のお願いを含めお礼をつたえましょう。

通夜の挨拶の例

<ゆっくり丁寧に>

本日はお忙しい中、亡き父○○の通夜にご弔問くださり誠にありがとうございます。
<一礼・一呼吸>
父は昨年から入退院を繰り返しながらも前向きに治療をしておりましたが、昨日午前11時30分、家族の見守る中息を引き取りました。享年65歳でしたがとても充実した生涯であったと思います。この場をお借りし、故人が生前にたまわりましたご厚誼とご厚情に心より感謝を申し上げます。本日は本当にありがとうございました。
<深く一礼をする>   

アドバイス

喪主が地元を離れている長男の場合、もしくはまだ若くて地域と関わりが少ない立場だった場合はあいさつの前に故人との関係を伝えてみましょう。
「長男の○○と申します。親族を代表してひと言ごあいさつを申し上げます」
そうすると普段はかかわりがなくても身近な感じがしますから、この後の儀式でも色々援助していただけるきっかけになります。

通夜振る舞い始まりの挨拶の例

本日はお忙しいところを、丁寧にお悔やみいただきまして誠にありがとうございました。
<一礼をする>
ここにお集まりの皆様には生前から大変お世話になっており、故人もさぞ喜んでいることと存じます。
ささやかではありますが飲み物とお食事をご用意いたしましたので、故人を偲びながら過ごしていただければと思います。
なお、明日の葬儀は○○時からでござまいす。何卒よろしくお願い申し上げます。

アドバイス

通夜振る舞いへのお誘いを通夜のあいさつに盛り込んでもいいのですが、そこまでの余裕はなかなか持てないものです。
進行の司会者に案内していただくか、入り口に通夜振る舞いへの案内を書いておかれると良いでしょう。
三々五々の解散になっていくものなので、忙しいとは思いますが喪主は帰られる方に気づいたときはひと言声をかけてお礼をいいましょう。
また近親者は喪主代わりに応対できるよう役割を決めておきます。

通夜振る舞いのおわりの挨拶の例

<一礼をする>
喪主に代わりまして、お礼を申し上げます。
お話は尽きませんが、遠方よりお越しの方もいらっしゃいますのでこのあたりでお開きにさせて頂きます。本日はこのような時間までお付合いいだたきまして誠にありがとうございました。

アドバイス

通夜振る舞いを閉める場合はお世話役の方・親族の代表に手短にあいさつをしていただきましょう。
喪主は見送りなど忙しくしていますので、待っていては時間がかかってしまいます。
また、喪主以外の方が閉めることで喪主の名残惜しさが余韻でみなさんに伝わります。

告別式の挨拶の例

<ゆっくり丁寧に>
親族を代表いたしまして、ごあいさつ申し上げます。
本日はお忙しいところ、父○○の葬儀ならびに告別式にご会葬くださいまして誠にありがとうございました。
<一礼・一呼吸>
また生前には皆様からひとかたならぬご厚情を賜り、療養中もお見舞いいただきましたことを、厚く御礼申し上げます。
皆さまからの暖かい言葉を励みに父も必死に治療をし、元気になることを望んでおりましたが病には勝てず65歳をもって往生いたしました。
本日このような大勢の方に見送っていただき故人も感謝をしていることと存じます。
皆様には今後とも故人同様、ご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げて、ごあいさつに代えさせていただきます。
本日は最後までお見送りいただきまして誠にありがとうございました。
<深く一礼をする> 

アドバイス

例文を暗記していたとしても、その中にちょっとした気遣いを入れると、借り物の言葉が薄らぎます。

  • お足元の悪い中・・・・。
  • 連日の猛暑のなか・・・・。
  • 休日にもかかわらず・・・・。
  • 最後までお見送りいただきまして・・・・。

など

精進落としの挨拶の例

ひと言ごあいさつを申し上げます。
連日にわたり、お忙しい中亡き父の葬儀にお付合いいただき、ありがとうございました。
<近親者全員一礼>
皆様のお力添えにより無事に葬儀を終えることができましたこと心よりお礼申しあげます。
ささやかではございますが、感謝と慰労を兼ねまして席をご用意いたしましたので故人との思い出などお聞かせいただきながら、ごゆっくりとお召し上がりいただきたいと存じます。
<深く一礼>

アドバイス

精進落としとは葬儀で世話になった人達を感謝の気持ちでもてなすために、喪主側が設ける会食です。「お斎」「精進上げ」ともいいます。

精進落としのおわりのあいさつ

<ゆっくりと丁寧に>
皆様、この度の葬儀では最後まで温かいまごころのこもったお見送りをいただき本当にありがとうございました。親族を代表いたしまして心よりお礼申し上げます。
また父亡き後も変わらぬご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
<近親者一礼する>
十分なおもてなしもできませんでしたが、これをもちまして終了とさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
<丁寧に一礼をする>

アドバイス

あいさつの中に「終了」という言葉を使うと最後の最後という意味が伝わります。
また、堅苦しい言葉を使うよりも敢えてシンプルな気持ちをそのまま伝えることで安堵の気持ちと感謝の気持ちが皆様の心に届くと思います。
今後の支援もお願いしつつ、しっかりとお礼を伝えましょう。

その他の場面での挨拶の例(喪主)

喪主はお葬式を執り行う中でとにかく色々な方とあいさつをする場面がありますが
まだこころの整理がつかないままでいる場合もあります。
そのようなときには無理に言葉を発しなくとも、深く一礼するだけで伝わります。
また喪主の代わりを担う方は、適切な言葉使い・適切な受け答えなど想定しながら参列者の対応をする準備をしておきましょう。

僧侶が到着されたとき

お忙しい中、御足労いただきましてありがとうございます。
何分不慣れですのでご指導いただきますようお願いいたします。

費用をたずねる時

大変恐れ入ります。
私ども初めてのことで何もわかりませんのでお教え願えたらと思いますが、お布施はいかほどご用意をしたらよろしいでしょうか。
※地区の世話役や親族に相談できる方がいればその方に聞きましょう。
※また喪主が若く負担が大きい時は親族のものが代わって僧侶に聞きましょう。

弔問のお客様に

お忙しいところお悔やみをいただきまして、ありがとうございます。
お忙しい中御焼香を賜りまして誠にありがとうございます。
ご丁寧なお悔やみをいただきまして、厚く御礼申し上げます。
など

その他の場面での挨拶の例(参列者)

傷心している遺族をいざ目の前にすると、言葉が詰ってでてこないものです。
しかしひと言でも声をかけておきたいと思われたなら、相手の落ち着いた様子がうかがえた時にしましょう。
遺族の気持ちも考えて、手短に弔意を伝えるだけにします。

遺族への言葉がけ

このたびは、まことにご愁傷様でございます。心からお悔やみ申し上げます。
この度のご不幸、まことに残念でなりません。ご愁傷様でございます。
思いがけないことで、言葉が見つかりません・・・おつらいとは存じますが、どうかお力落としなさいませんように。
など

まとめ

いかがでしたか?
お葬式でのあいさつは気持ちの整理もままならないのに、大勢の参列者を前にお話しなくてはなりません。
自信のない方はメモを見ながら読み上げることも失礼ではありませんし、どうしても言葉がでてこなくなったら、「本日はありがとうございます」と深く一礼をするだけでも大丈夫です。
とても緊張をしますが、ゆっくり丁寧にお話をする姿をみてその気持ちを参列者は汲み取ってくれます。
また、おくやみを伝える立場になった場合は遺族の心をいたわることを忘れないでその心情を十分に配慮しましょう。
お互いに悲しい気持ちを共有し故人を悼むことが何よりも大切なことだと思います。