坊守が教えるお葬式のこと

住職の妻である坊守がお葬式の知っておきたいことを紹介するブログです。

坊守が教えるお葬式の礼拝の作法やマナーと予備知識

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(ここではよくある仏式を例題に・・・)
仏式のお葬式では焼香を焚く作法があり、それは故人の冥福を祈る儀式です。
作法に戸惑いながら、その場をやり過ごしていた方もいるのではないでしょうか?
しかしご自身が喪主になった場合、焼香は一番目に指名されます。
一度は宗派の作法を確認しておくといいでしょう。

一般的な焼香の作法

1)祭壇に近づいたら立ち止まって僧侶と参列者に向けて一度だけお辞儀。
2)祭壇の前にすすんだら、遺影を仰ぎ深く一礼。
3)右手の指先(親指・人差し指・中指)で香を軽くつまみ香炉にくべる。
=各宗派の作法=
●浄土真宗本願寺派
1回 (シンプルにくべる)
●浄土真宗大谷派
2回 (シンプルにくべる)
●浄土真宗高田派
3回 (シンプルにくべる)
●日蓮宗
1回もしくは3回 (押し頂いてくべる)
●日蓮正宗
3回 (押し頂いてくべる)
●浄土宗
1回~3回 (押し頂いてくべる)
●真言宗
3回 (押し頂いてくべる)
●臨済宗
1回 (特に動作にきまりはない)
●曹洞宗
2回 (はじめを押し頂き、次はシンプルにくべる)
●天台宗
回数やくべ方に定めはない
※上記にない宗派は情報を集めてみてください。
4)抹香を軽く整え乱れを直す
5)遺影に向かって合掌をして故人の冥福を祈る
6)数歩下がったところで僧侶と参列者に向かって軽く一礼をする
7)念珠を左手にもち、自分の席に戻る

以上

焼香に関係する豆知識

香を焚く意味

そもそも香を焚くとはどんな意味があるのでしょう。
一般的には香気によって仏を供養するといった意味で使われています。
宗派によっては清める・浄土へ導くという表現をしたりしていますが、要は香を焚きその香りに包まれたとき私たちは事実と今生の別れを受け入れ、仏教に触れるということです。
そして手を合わせ先祖や仏様に託すべく故人の冥福を祈ります。
香を焚くことは、こうやって亡くなった者と遺された者そして仏とが向き合う時間をすごすということです。

焼香の種類

通常お葬式の焼香といえば立礼が多いのですが、このほかにも焼香の形式があります。
別の形式であっても動作の作法はかわりませんが、種類を把握しておけばその場で混乱することはないでしょう。

立礼焼香

通常のセレモニーホールなど参列者が多い場合に使われる方法
焼香台の前まで行き、立ったままで順番に焼香していく形式

回し焼香

会場が狭い場合に使われる方法
盆に香炉と抹香を乗せ、盆ごと順番に回して焼香をする形式

座礼焼香

法事などの場合に使われる方法
一人ずつ焼香台の前へ行き正座をして焼香を行う形式

心がけてほしい動作

焼香の最中に余分な動作はしてはいけません。

指先が気になったとしても、香をはらい落とす、ハンカチを取り出すなどの動作を祭壇の前でするのはマナーに反します。

香をくべる時、つまんだ指先を上に向ける仕草(手のひらを上に向けること)はしません。
一連の動作一つ一つを丁寧に行い、たとえ間違えても慌てずに粛々と執り行いましょう。

喪主が知っておきたいQ&A

Q

抹香(まっこう)と線香(せんこう)との違いは何ですか?
使い分けの区別はどのようにするのですか?

A

抹香(まっこう)とは、粉末状のお香のこと。
お葬式や法事・祥月で使用され、主に沈香(じんこう)が使われる。
線香(せんこう)とは、練り合わせた香を細い棒状や渦巻き状に成形し乾燥させたお香のこと。
普段のお墓参りや月命日でのお参りに使う。
夜通し遺体に付添う仮通夜の枕飾りには実利な面から渦巻き型が使われる。

念珠に関する豆知識

念珠の意味

念珠とは一般的に「数珠:じゅず」と呼ばれ、お葬式や法事に欠かせない法具。
本来は念仏の回数を数えるために使いうもので、つまり『数を念ずる』というというところから名前がきています。
仏式のお葬式に立ち会う時には必ず必要ですので、成人した方は大人のたしなみとして準備しておきましょう。
突然のお葬式で間に合わせたような念珠は、持ち主の好感度を下げてしまいます。
その風体で安価なかんじが逆に目につくものです。
やはりこのような儀式に使うものはしっかりと作られた物を持参しましょう。
また、宗派が違っていてもご自身の念珠で拝礼しても失礼にはなりません。

念珠の形について

略式の念珠

万能なものは「略式の念珠」
といってどの宗派でも使える念珠になっています。
正式には“一連・二連”というふうに数えますが、略式は一連になります。

選ぶポイント

扱いやすくご自身の手にしっくりくるもの。
高価な玉や素材と御利益とは全くありません。
男性用と女性用で形が変わります。
色やデザインは好みで大丈夫です。

本式念珠

ご自身の宗派で購入される場合「本式念珠」を選びます。
宗派によって形やつくりが違い特徴もありますが二連のものになります。
また念珠の掛け方が変わりますので購入の際にきちんと教えてもらいましょう。
このような説明をきちんとしてくださる所で購入するのが安心です。

念珠のつくりについて

念珠は「親玉」「主玉」「四天王玉」「弟子玉」「露玉」「浄明」「中通し紐」というパーツの構成で作られています。
名前の由来をたどっていくと、とても興味深い世界が見えてきます。
念珠のつくりを知るとご自身の念珠に対する愛着がより一層わいてきます。

親玉

釈迦如来・阿弥陀如来を表す珠
房付きの大きな玉で、念珠の要
ここから転じて組織のトップや座頭などを「親玉」といったりする

主玉

108つあるという煩悩の数または百八尊(百八人の仏や菩薩の意)
本式には108個の玉を使用

四天王

主玉と主玉の間にある一回り小さな4つの玉で四天王もしくは四菩薩を表す

(四天王:持国天・増長天・広目天・多閣天)
(四菩薩:観世菩薩・弥勒菩薩・普賢菩薩・文殊菩薩)
略式の場合2つの玉で二天王もしくは二菩薩を表す

弟子玉

房につく20個の小さな玉
「十大弟子と十波羅密」または「十大弟子と十菩薩」を表す
十大弟子とは釈迦弟子の中でも優れた10人のことです。
棟方志功の代表作のモチーフになっています。

露玉

弟子玉を留める露型の玉

浄明玉

親玉の下の位置にあり「菩薩」を表す

中通し紐

玉を繋いでいる紐のことで修行の意味がある。
「観音菩薩」をあらわす。
いかがでしたか?念珠の中には壮大な世界が詰まっています。
念珠のかたちやつくりは大体同じですが、細かいところで各宗派のこだわりや思想が詰まっていますので機会があれば他宗の念珠を観察してみましょう。
そしてご自身が一生付き合えるこだわりの念珠に出会ってください。

腕輪念珠とパワーストーン

あるお葬式に駆け付けたときの話

私の近くに30代くらいの女性二人がいまして、どうやら一人の方が念珠を持たずに斎場にいらしていたのですが・・・。
腕輪念珠をしているから大丈夫でしょ、ということでした。
残念ながらとても非常識ですね。
まず、腕輪念珠では通常使う念珠の代用にはなりませんので、お葬式にも法事にも通用しません。(もちろん流行りのパワーストーンも同じです。)

腕輪念珠とは何か

宗教的にいいますと、これは念珠を小型化して、日常的に身に着けられるようにしたもの。
仏具を身に着けるという意味で精神的に安定されるかたもいるでしょう。
しかし一般的にはアクセサリー感覚で使用されています。
最近ではお寺の落成記念・などの記念品として配られることもありますし、神社仏閣で販売もされていますが、儀式には不向きです。

パワーストーンとの違い

念珠とパワーストーン(ブレスレット)とは全く違います。
形状も似ていますし前向きな思考やエネルギーをもらうといった思想が似ているため混同しがちですが、パワーストーンのブレスレットも儀式で使う念珠の代わりにはなりません。

喪主としての役割とマナー

喪主は無事に葬儀を執り行う為に常に緊張を強いられます。
葬儀会社との連携をとることにばかりでなく、自分で意識していなと忘れがちな役割があります。

僧侶への挨拶を忘れずに

僧侶が会場につく目安は式の30分前です。
喪主にとっては席順を確認したり、受付の方との打ち合わせで一番慌ただしいときですが、通夜・本葬とお世話になりますから僧侶が控室に入ったら必ず喪主が挨拶へ伺いましょう。

お手伝いの方への声掛け

お手伝いされる方は友達であったりご近所であったり、つい身内感覚になりやすいので挨拶するのを忘れがちです。
裏方にいるお手伝いの方は、喪主へ声をかける機会がなかなかありません。
ですから、通夜の前に時間があるときに声かけをしてください。

参列者への立礼(お辞儀)を忘れずに

ご自身の焼香が終わると、親族→参列者へと順番に流れていきます。
ここで気を抜いてしまい着席したままではいけません。
喪主は焼香が済んだら着席はせず、焼香台の横で参列者の焼香を待ちます。
世話役や近しい身内とともに並んで、焼香を終えた方にお辞儀をします。

まとめ

式の礼拝の作法やマナーについて普段から気になることを含めながら紹介しました。
読み終えていかがでしたか?
すこし専門的かもしれませんが、礼拝にまつわる事象や持ち物の意味を理解すると作法についても上手く立ち振る舞えます。
また漠然と礼拝し冥福を祈るだけでなく、お葬式という儀式と自分の関係を見直すことができるのではないでしょうか。
ここでは礼拝の作法・マナーなどを喪主視点で説明しましたが、参列者においても同じです。
今後にいかしていただければと思います。
最後にそもそも礼拝とは・・・を少し説明します。
合掌や礼拝は一体誰に向かってするのでしょうか?
何度もでてくる行為ですが、これは故人だけに向けているわけではありません。
その先にいる仏様にも向けられています。
その仏さまが信仰によって違ってきますからこの機会にご自身のルーツを考えるきっかけにしていただければ幸いです。