坊守が教えるお葬式のこと

住職の妻である坊守がお葬式の知っておきたいことを紹介するブログです。

坊守が教えるお葬式の形式や予算、場所などまず決めるべきこと

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普段お葬式のことを考えることはないかもしれませんが、突然の不幸が見舞いお葬式を執り行わなければならない可能性は誰にでもあります。
喪主という役目を務めることになった場合、気持ちも落ち着かないままに決めなければいけないことが次々に出てきますが、お葬式とは大切な人との最後の儀式です。
後悔しないためにも知っておいてほしいこと、また気を付けることなどお寺に身を置く者の視点からいくつかご紹介していきたいと思います。

お葬式を執り行うことになったら、まず確認しなくてはいけないことがあります。
形式と宗派・葬儀の規模・予算・葬儀の場所についてです。
葬儀会社に速やかに見積もりを出してもらい段取りをしていただく為に家族と親戚・関係者で確認しましょう。

お葬式の形式

お葬式の形式とは、簡単にいうと「宗教は何か?」ということです。
まずはご自身がどこの宗教に属しているかを知ることが必要になるでしょう。
仏教ですか?キリスト教ですか?それ以外でしょうか。
どこの宗派にも属していません・・・という方もいるでしょう。
たとえばお寺の住職にお経をあげていただきたいと思えばそれは仏経=仏式になります。
どのような形式にするかは故人の希望の有無も確認して家族と相談して決めましょう。

仏式

お寺の住職に依頼をし、読経によりお儀式を行います。
念珠・焼香・合掌をして故人の冥福を祈ります。

神式

神社の神官に依頼をし、祝詞を詠んでいただきお儀式を行います。
玉串奉奠の義を祭壇に捧げます。

キリスト式

神父・牧師によるミサを行います。
カトリックでもプロテスタントでも献花を行って故人を偲びます。

無宗派式

自由な形式と式次第で行うお葬式です。オーダーメイドのお葬式ともいえます。
音楽や献花など、個々の家族らしいお別れができます。
どの形式でおこなうことになっても、葬儀会社は対応してもらえます。
仏式以外で行う場合はよく打ち合わせをされるといいでしょう。

お葬式の宗派について

形式がきまると宗派の確認です。
おそらく7~8割は仏式で行われているお葬式ですが、その宗派は様々です。
近頃はお寺との檀家関係を持たなくなっている場合もありますし、故郷に帰省する機会も減っていますから、何かの機会に一度調べておくといいでしょう。
先祖は○○宗○○派だったような・・・。とうい方は結構いらっしゃいます。
自分にそのこだわりはないといった場合、どの宗派にお願いするのか親戚または知人の経験を踏まえて話合って決めることが良いでしょう。
また葬儀会社のアドバイスを聞くこともお勧めします。
この時に押さえるべきことは、お葬式を依頼した宗派が今後の戒名や法要や納骨・お墓までかかわってくるということです。
行き当たりばったりでお葬式の宗派を決めてお願いすると、そのあとで問題がでてくることもありますから、自分が生涯かかわることのできるところを相談し決めましょう。

宗派を知ろう(唱名*題目・経典・本尊)    

  • 浄土真宗(南無阿弥陀仏・浄土三部経・阿弥陀如来)
  • 浄土宗(南無阿弥陀仏・浄土三部経・阿弥陀如来)
  • 天台宗(南無阿弥陀仏・妙法蓮華経 他・釈迦牟尼如来)
  • 曹洞宗(南無釈迦牟尼仏・般若心経 他・釈迦牟尼如来)
  • 真言宗(南無大師遍照金剛・般若心経 他・大日如来)
  • 日蓮宗(南無妙法蓮華経・法華経・大曼荼羅)
  • 臨済宗(南無釈迦牟尼仏・般若心経 他・釈迦牟尼如来)

上記の他にもあります。
簡単に紹介してみましたが、心当たりの宗派があれば情報を集めてみましょう。
あと、○○派の部分は歴史的な事情などで分かれていたりするものですので、どこにも属さない身であれば住職に尋ねて聞いてみるのがいいでしょう。
地域色の強い派もあればオールマイティにまんべんなく点在している派もあります。
お住まいの地域・または故郷の情報を得てから相談をしてみてはいかかでしょうか。

お葬式の規模はどのくらいにするか

ここでいう規模とはお葬式のかたちをどのようにするかということです。
故人の希望・社会のつながりはどうだったか、どのような立場であったかという所も加味しながら考えることをおすすめします。
近頃では一般的なお葬式よりも家族葬のような形を選択される方が増えてきました。
都会ではもう少し簡略した1日葬で行う人も多いことでしょう。
家族のかたちもお葬式のかたちも変わってきていているこの頃ですが、故人を偲ぶという気持ちは皆さん変わらないと思います。
どのようなお葬式にするか具体的な要望を葬儀会社に伝え、家族が納得をして送り出すことのできるかたちを選んでください。
ちかごろはスムーズに話を進めるために、生前からプランを準備しておく方もいらっしゃいます。

通常の場合

一般的には100人以上の参列を考えます。
親戚をはじめ仕事先・ご近所の方々・友人などに訃報をお知らせしますから、参列者が多くなります。
世話役を決めておくとお葬式のサポートをしていただけるので、喪主は落ち着いて故人を送ることができるでしょう。
お葬式のしきたりも流れもおおよそ決まっているので葬儀会社の助言(地域の習慣や実例)を聞き通常のお葬式のプランとランクを決めましょう。

家族葬の場合

50人以下の参列を考えます。
身内だけでの小さな規模のお葬式になりますが弔問客や、進行に気を遣わずにゆっくりと死を悼み過ごすことができます。
費用も一般の葬儀に比べて抑えられます。

一日葬の場合

10人以下の参列を考えます。
亡くなった日に近親者のみで故人とのお別れの時間をもち、翌日葬儀・火葬を行います。
無宗教やお寺とのつながりが全くない場合や費用をかけない葬儀を望まれる場合に、このようなかたちで行われます。

直葬・密葬の場合

密葬する場合は後日あらためてお葬式を執り行うという前提です。
大人数の参列が予想されお葬式での混乱を避けるために家族が配慮した形になります。
または、年末年始に亡くなった場合、感染症で亡くなった場合も先に火葬をしてあとでお葬式を行うので密葬といいます。
直葬とは家族とごく親しい人だけで、通夜も告別式もしないスタイルです。
亡くなったら火葬場所へ安置して火葬前にお寺の住職にきてもらい読経をして見送ります。
※仏式を例に書きましたが、その他でもほぼ変わりないと思います。
念のため葬儀会社とよく話をして内容の確認をされることをおすすめします。

予算の目安について

一般的なお葬式にかかる費用を色々調べてみますと、200万くらいの予算が目安になっているようです。
この金額の内訳は、実は 葬儀一式費用+飲食接待費+お寺の費用(お経料、戒名料)の三つだけです。
お葬式にかかる費用は当然これだけではないですし、また一式というセットやランクの中身がどこまでのものなのか一つ一つ丁寧に確認することが必要です。
さて内訳の中でなかなか明確にわからないのがお寺の費用になりますが、これは各お寺や地域によって差があるからです。
またお寺と故人のつながりによっても変わってきます。
戒名についてはお寺によって、ルールが設けられているところもあります。
例えばわたしの経験した中では、故人が自分の戒名料を積み立て方式で生前からお寺へ支払っていたという方がおられました。
また戒名に位はなく、一定の金額に設定されているお寺もあります。
戒名・法礼につてはなかなか聞きにくいとおっしゃる方もいますが、私は住職に直接聞くことがよいかと思います。
お寺の住職に枕経(亡くなってはじめての儀式)をあげていただいた後に、お葬式や法要の打ち合わせをしますので、この段階でわからない所をはっきりさせておきましょう。
その後、家族でお寺との関係・今後の付き合い方を話し合いお布施の金額を決められるのが良いと思います。

その他必要になってくるものは

  • 搬送料(病院→案置場所→葬儀場)
  • 搬送ドライバーへの心づけ
  • 火葬料
  • 火葬場係員への心づけ
  • 収骨容器
  • 親戚の宿泊費
  • 忌明けの香典返し費用
  • 追加で依頼した内容の費用

参考までにお葬式に関わる心づけの金額は3,000円~5,000円が相場でしょう。
白封筒に入れて準備をしておきます。渡す前に葬儀会社に聞いておきましょう。
ただし公営の火葬場の場合は受け取ることが禁じられていますので渡すことはしません。

お葬式の場所について

お葬式をどこの場所で行うかは、規模や予算にも関係があります。

  • セレモニーホール
  • 自宅
  • 公共の施設
  • 地域の集会場
  • お寺

など、選ぶ際には家族や住職の控室があるかどうか、焼香や参列者の入るスペースがあるかどうか、参列者の駐車場やその他の設備の有無も考えて決めます。

すべてのことを考慮して、最終的に家族が望むお葬式はどこで行えるのかを決定をしていくのがいいでしょう。

まとめ

まずは喪主や家族に向けて、お葬式を執り行うまでに知っておいてほしいこと、また気を付けることなどの内容を取り上げてみましたがいかかでしたでしょうか。
近頃はお葬式の規模が小さくなっていてなかなか準備の段階から式に関わる経験も少なくなっていますのでいざ喪主になったときには何かと不安や心配もあるでしょう。
また、お葬式のかたちも多様になりどんどん変わり始めている時代ですから、つい何も考えないでお任せばかりですと、バタバタと慌ただしく過ぎていってしまいがちです。
打ち合わせの段階でどんなお葬式にしたいかということをしっかりと決めておかれると告別式や本葬その後の法要まで迷いなく執り行うことができると思います。
私はお寺に身をおいているので色々な方のお葬式に関わっていますが、お葬式を滞りなく無事に終えられた方は、悲しみの中にいながらも故人と関わりのあった方への感謝気持ちをよく言葉にしていらっしゃいます。
ですから、どんなかたちのお葬式であれ喪主やご家族の方には大切な故人の最後の儀式を心穏やかに落ち着いて過ごしていただきたいと思っています。